認知症と銀行口座

 みなさんこんにちは!行政書士の岡部です。早速ですが、親が認知症などによって判断能力が低下している場合、そのことを銀行に知られてしまうと銀行口座が高確率で凍結されてしまうことをご存知でしょうか?

 銀行に認知症であることを報告したり、銀行側が高齢者が預金を引き出すのに苦戦しているといった認知症による判断能力の低下をうかがわせる事情を察知すると銀行口座が凍結されてしまうのです。ただし軽い認知症であれば代理人カードや、一部の銀行では委任状によって預金を引き出すことができます。しかしこれには限界があります。

口座が凍結されると?

 例えば親が病院や老人ホームを利用する場合に、口座が凍結されてしまうことでたとえ十分な預貯金があったとしても、それらの料金の支払いを親の預貯金から行うことができなくなります。お金に余裕のある親の医療費や介護費を、金銭的に厳しい子が支払うといったことになりかねません。

成年後見制度の利用

 成年後見人は判断能力を欠く(ない)本人代わって各種契約の締結などの身上監護や、預貯金や不動産などの財産管理を行います。一旦認知症により口座が凍結してしまい代理人カードや委任状によっても引き出せないとなると、家庭裁判所に申立を行い、本人に対して成年後見人をつけることによってしか、本人の銀行口座から引き出すことができない場合が多いです。

 成年後見人等を申立てる動機として、9割以上が預貯金の管理・解約を挙げていることからも、成年後見制度が高齢者の口座凍結の解決策として利用されていることが分かります。上記のケースでは、親の銀行口座凍結は成年後見人の選任によって解決することになります。

<参考>  「成年後見関係事件の概要 令和6年1月から12月まで」 (裁判所HP)

/https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2025/20250313koukengaikyou-r6.pdf

本当に成年後見でいいのか?

 本記事で最も強調したい点はここです。前回の記事でも言及したように成年後見はあまり使いやすい制度とはいえません。成年後見人等の選任手続での煩雑な作業や選任後の事務は一般の親族にとっては負担が大きいことだと思います。

 成年後見の申立手続を専門家に依頼すると当然報酬(10万から20万程度)が発生します。また第三者が後見人に選ばれた場合の報酬は財産額が高くなるほど上昇し、月額2万から6万円がめあすです。裁判所により成年後見監督人が選任された場合にも財産額により月額1万から3万円程度の報酬が発生します。

 財産管理にも大きな制限がかかります。節税対策や借入などの本人の財産を減少させる恐れがあるものはできなくなります。第三者の後見人が不当に本人や親族の意向を軽視するケースもあります。しかもこれらの負担が、本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで続くことになります。

<参考> 「ケーキは買うな」「温泉行くな」成年後見人が生活の切り詰めを迫る理由→“報酬は貯金に比例」

 RKB毎日放送ニュース

任意後見

 任意後見は契約による後見です。判断能力の低下に備えて、各種契約締結などの身上監護や財産管理をお願いしたい方と公正証書で契約を締結します。そしてもし必要になったら、家庭裁判所に申立てた上で任意後見監督人が選任されることで効力が発生します。任意後見のメリットは後見人や後見の内容を自分自身で決定することができる点です。

 制度の発想自体は本人の自己決定権の尊重という成年後見制度の趣旨に沿った素晴らしいものです。しかし「任意」といいつつも、公正証書で契約書を作成したうえで、裁判所への申立をして任意後見監督人が選任されなければ効力を発揮しないという手続面の大変さから利用は低調です。

銀行の予約型代理人サービス

 予約型代理人サービスは、認知症などで口座が凍結される場合に備えてあらかじめ預金の引き出し等の手続代理するする者を決めておくサービスです。これによって認知症による口座凍結を防ぐことができます。三菱UFJ銀行が先立って導入した画期的なサービスで、いくつかの銀行でも導入されています。

福銀と西銀では?

 とはいえ、2025年12月17日の時点では福岡県の主要銀行である福岡銀行と西日本シティ銀行では、予約型代理人サービスは導入されていません。まずはご利用の金融機関に確認してみましょう。

信託という選択肢

 信託は委託者(信託を頼む人)が受益者(委託者と同じ場合もある)のために、受託者に財産の管理・運用等を行ってもらうものです。一般的に信託といえば、証券会社や銀行が販売している投資商品のことを思い浮かべると思います。しかし実は信託が認知症対策に使えることをご存知でしょうか?

 信託があれば認知症などで口座が凍結しても、契約の範囲で信託財産の管理・運用を行うことができます。加えて本人の成年後見が開始しても、信託財産は後見人等による管理の範囲外になります。

 認知症対策に使える信託には銀行などが案内している信託と、家族間の契約による家族信託があります。銀行からはさまざまな商品が登場していますので興味がある方は調べてみてください。

 家族信託は基本的に認知症などによる判断能力を心配される方が、自分の財産を信頼できる家族に管理・運用してもらうものです。家族信託にはそれぞれの家庭に合わせた柔軟な内容にすることが可能であるというメリットがあります。

 始めるには信託用口座の開設や不動産の登記が必要です。家族信託契約書は一般の方が作成するのは難しいです。家族信託は信託に強い弁護士、司法書士、行政書士が取り扱っていて、費用相場は50万円から100万円と高額です。

さいごに

最後まで見ていただき、ありがとうございました。当所でも認知症対策や信託についての相談を受けつけていますのでお気軽にお問い合わせください。

行政書士岡部事務所 トップページ

/https://okabegyosei.com/

 

\ 最新情報をチェック /