法定後見制度と成年後見
法定後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な方の支援を行うための制度です。法定後見制度には、成年後見、保佐、補助の3つの類型があります。その違いとして、対象となる方の判断能力が低下している順に、成年後見、保佐、補助となり、権限についても違いがあります。
そのうち成年後見は判断能力を欠く(ない)方がいる場合に、その方に代わって、成年後見人が各種契約の締結や取消しなどの身上監護や、財産の管理を行う制度です。成年後見は家庭裁判所に申立を行い、後見開始の審判がなされることで開始します。
本人に代わって身上監護や財産管理をする人を成年後見人、それらの支援を受ける本人を成年被後見人といいます。また裁判所が必要と認める場合には、成年後見人を監督する成年後見監督人が選任されることがあります。
どんな場合に利用されているのか?
実際には、身上監護のほか、預貯金の管理・解約、介護保険、不動産、相続放棄などの手続を本人に代わって行う必要がある場合に利用される場合が多いです。最も多いのは本人が認知症等で判断能力が衰えたことで、預貯金が引き出せなくなった場合に利用されるケースです。
申立の手続
成年後見人等を選任するためには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ審判の申立を行わなければなりません。申立を行うことができる人は、本人、配偶者、4親等以内の親族、市町村長、後見人等などです。審理期間は裁判所が鑑定を行うかどうかなど、場合によりますが、2か月以内に約7割、4ヶ月以内に約9割が完了します。手続の詳細は以下の裁判所が公開している「成年後見申立ての手引き」をご覧ください。
参考 成年後見申立ての手引き(裁判所HP)
/https://www.courts.go.jp/fukuoka/vc-files/fukuoka/R071001_fc_seinennkoukenn_mousitate_tebiki.pdf
成年後見人等(保佐人、補助人を含む)になる人は?
申立書には成年後見人等(保佐人、補助人を含む)の候補者を記載することができます。もちろんそれが審判の中で考慮されますが、最終的には裁判所の判断によります。親族同士の仲が悪く適切に後見が行われると期待できない場合や、財産の額が一定額を超える場合などは、親族が選ばれないことが多いです。
令和6年では全41322件中、親族以外が成年後見人等になったのは34245件(82.9%)とかなり多いです。ただし申立書に親族の候補者が記載されていたのは、全体の21.3%にとどまることを考慮する必要があります。
親族以外の成年後見人等では司法書士、弁護士、社会福祉士が全体の8割を示めています。行政書士や社会福祉協議会などが後見人になることもあります。また親族が後見人になる場合でも、また裁判所が必要と認める場合には弁護士や司法書士などが後見監督人に選任され、後見監督人の監督のもと後見人事務を行うことになります。
成年後見人の仕事は?
成年後見人は就任後、財産管理のために預貯金や重要な書類の引き渡しを受け、就任について役所や金融機関などに届出を行います。そして裁判所の提示した期限までに財産目録・収支予定表及び初回の事務報告書を作成し、裁判所へ提出します。
就任中は本人(成年被後見人)の方の前述の財産管理と身上監護を行い、年に1度家庭裁判所に定期報告を行います。財産管理としては、本人の財産を他と分けて管理を行い、領収書を保存することなどがあります。
成年後見の注意点
成年後見はあまり使いやすい制度とはいえないため、利用にあたってはいくつかの注意点があります。
①手間やお金がかかる
成年後見の申立にあたっては、医師の診断書や戸籍謄本のほか多くの書類が必要になります。費用は家庭裁判所によって鑑定が行なわれない場合は、1万円~~2万円になります。鑑定を行う場合は10万円程度になります。申立手続を司法書士に代行してもらうことも可能で、その場合の報酬は場合によりますが、10~20万円程度が相場です。
参考 成年後見人等の報酬額のめやす(裁判所HP)
/https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/2021nendo/kasai_koken/4_R40201_housyunomeyasu.pdf
成年後見開始後の負担
自分が後見人になる場合は、前述の裁判所への書類提出や領収書の保管などの事務を自分で行わなければなりません。
第三者の専門職が後見人に選任される場合の報酬額は月額2万円を基準として、管理財産額が上がるほど高くなります。財産額が1000万円超で月額3~4万、5000万円超で月額5~6万円程度がめあすです。また後見人の身上監護等の業務で特別困難な事情があった場合は、基本報酬額の50%の範囲内で報酬が発生します。
後見人が裁判に勝訴、遺産分割協議を行う、移住用不動産を売却するなどの、特別な行為を行った場合は、それについて報酬が発生します。
後見監督人が選任されている場合は別途報酬の支払いが必要です。金額は月額1万円から2万円が基準となります。5000万円を超える場合は月額2万5000円から3万円がめあすです。
②財産管理の制限
成年後見は本人の財産を守るための制度です。そのため、本人から家族へのプレゼント、生前贈与などの節税対策や、借入、所有する不動産への担保権の設定など本人の財産が減少するおそれがある行為は制限されます。もともと家族が本人に扶養されていた場合では、こうしたことがより負担に感じやすいと思います。
また本人の居住用不動産を処分する場合は家庭裁判所の許可が必要になります。
③後見人等に不満があっても解任しにくい
残念ながら専門職後見人や後見監督人の中には、ほとんど面会に来ない、本人や親族の意向を不当に軽視する、報酬額の関係もあり財産の維持になる後見人もいるようです。
こういった場合でも「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由がある」場合で、家庭裁判所の許可がなければ解任することができません(民法846条)。後見人に財産の横領などの不正行為がなく、単に不満がある場合では解任は難しいことが多いです。
④1度後見が開始するとやめられないことが多い
成年後見は本人の判断能力が回復し、家庭裁判所で後見開始の審判が取り消されないかぎり、亡くなるまで後見をやめることができません。
一方で成年後見人に正当な事由がある場合は、家庭裁判所の許可を得て辞任することができ、成年後見人が交代することになります。
さいごに
さいごまで読んでいただきありがとうございました。以上成年後見についての解説でした。当所では申立手続は行っていませんが、成年後見についての相談や司法書士の先生の紹介は行っているので、お気軽にお問い合わせください。次回は法定後見制度のうち、保佐と補助について解説します。
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