本記事は遺言作成について、その方法や前提知識に関して解説するシリーズの初回です。分かりやすい解説を心がけますのでご期待ください。
相続人について
相続人になりうる者は、配偶者、子などの直系卑属(直接血が繋がっている自分より後の世代の方)、親などの直系尊属(直接血が繋がっている自分より前の世代の方)、兄弟姉妹、姪、甥がいます。養子や養親であっても相続人になります。
相続順位について
まず子、親、兄弟姉妹には相続順位があります。子が第1順位で、親などの直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位です。そのため子(孫、ひ孫含む)がいる場合には親と兄弟姉妹は相続人にならず、親(祖父母含む)がいる場合は兄弟姉妹は相続人になりません。一方配偶者はいかなる場合でも相続人になります。しかし他の相続人がいる場合には配偶者だけが相続人になるわけではありません。
つまり、相続の順位は子(子>孫>ひ孫)>直系尊属(親>祖父母)>兄弟姉妹(兄弟姉妹>甥や姪)で、配偶者がいる場合はこの順位の中で相続人になる者と配偶者が相続人になります。配偶者がいる場合の遺産分割は以下の法定相続分を基準として行います。
配偶者と他の相続人間の法定相続分(民法900条)
配偶者と子(孫やひ孫が代襲相続する場合を含む)の場合は配偶者2分の1と子全員で2分の1
例 亡くなった方の配偶者と子が2人、親が1人、兄弟が2人の場合は、配偶者2分の1、子が全体で2分の1、それぞれ4分の1ずつです。親と兄弟姉妹は相続人になりません。
配偶者と親(親が亡くなっていて祖父母がいる場合を含む)の場合は配偶者が3分の2、親全体で3分の1ずつ
例 亡くなった方の配偶者と、親が2人いる場合は、配偶者3分の2、親が全体で3分の1でそれぞれ6分の1ずつになります。
配偶者と兄弟姉妹(甥や姪が代襲相続する場合を含む)がいる場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1ずつ
例 亡くなった方の配偶者と、兄弟が2人の場合は、配偶者が4分の3、兄弟が全体で4分の1でそれぞれ8分の1ずつになります。
半血兄弟がいる場合
兄弟姉妹が相続人になる場合で、兄弟姉妹が亡くなった方と両親の片方のみを同じくする場合は相続分が通常の半分になります(民法900条4項)。
例 亡くなった方の相続人として兄弟姉妹が2人いて、1人が父の再婚相手の子であった場合
半血兄弟の相続分は通常の半分なので、両親の双方を同じくする子が3分の2、再婚相手の子は3分の1になります。
①孫、ひ孫、甥、姪が相続人になる場合(代襲相続)
孫やひ孫、甥や姪は代襲相続が発生する場合のみ相続人になります。代襲相続とは相続人となるべき者が亡くなっている場合や、相続欠格や廃除によって相続権を失った場合にその人の直系卑属(子)が相続分や相続順位を承継する制度です。同順位の相続人のうち、1人でも亡くなったり相続権を失っていれば、その人について代襲相続が発生します。また重要なことですが、相続放棄は代襲相続の原因になりません。
孫が相続人になる場合
例 亡くなった方の子が2人いて、1人は子供がおらず、もう1人は亡くなっていて3人の子供がいる場合
この場合は、子と孫が相続人になります。子供がいない子は2分の1、孫は亡くなった子の相続分を引き継いで全員で2分の1、1人あたり6分の1になります。
甥や姪が相続人になる場合
甥や姪が相続人になるのは、亡くなった方に子などの直系卑属、親などの直系尊属がいない場合において、兄弟姉妹からの代襲相続が発生する場合です。相続順位や相続分は兄弟姉妹を承継します。甥や姪からその子へは代襲相続は発生しません。
例 亡くなった方の配偶者はいるが親や子、孫はいない状況で、弟が1人でかつ姉が亡くなっているがその子供が1人いる場合
この場合では、まず配偶者と兄弟姉妹の関係で考えます。配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1になります。兄弟姉妹の相続分のうち、姉が亡くなっているため、代襲相続によりその相続分が姉の子に引継がれます。よって配偶者4分の3、弟と姉の子が8分の1ずつになります。
②祖父母が相続人になる場合
祖父母は親が両方亡くなっている場合で、かつ子や孫などの直系卑属がいない場合に限って相続人になります。相続順位や相続分は親を引継ぎます。子や兄弟姉妹の代襲相続とは違って、親が相続放棄すると祖父母が相続人になる点に注意しましょう。
胎児がいる場合
無事に生まれてきた場合に相続人になる胎児については、法律上生まれたものとみなされます(民法886条1項)。実際には胎児が生まれてくるのを待って遺産分割協議を行うことになります。
さいごに
今回は相続人や法定相続分について解説しました。複雑なのは代襲相続が発生する場合がほとんどです。それ以外は難しくないので図を書いて法定相続人を把握してみてください。もしこの記事を見て分からないところがあればお気軽にお問い合わせください。次回は一般的な遺言と民法の遺言制度の違いについて解説します。
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